神の道化師 イタリアの民話より
神の道化師 イタリアの民話よりの感想
作・絵: トミー・デ・パオラ
訳: ゆあさ ふみえ
出版社: ほるぷ出版
幼い頃に読んだ絵本の記憶は未だに忘れられなかったりする。
まだ字も読めないころに読み聞かせてもらったから、絵しか記憶に残ってないのは当たり前だ。
絵本は小説とは違って絵が多く、文字がすくない。
よって絵本にとっての絵は物語のよしあしを決める重要な要素になる。
この絵本は、ジョバンニという貧しい少年が、自分の特技を生かして大道芸の道に入る話だ。
はじめは評価を得られたものの、年をとるごとに芸のうでは落ち、だれにも相手をされなくなってしまう。
あるとき、イエス様の像に近づいたジョバンニは自分の芸を披露する。
絵本だけあって、あらすじだけ書くとこれだけでおしまいになってしまう、とても短い物語だ。
しかし、味のある作風は見ていて飽きがこず、「小さい頃だったら今でも記憶に残っているだろうな」と感心した。
さて、このジョバンニという男だがとても芸が達者である。
作品の中でボールを七つ投げているが、これを実際にやろうものなら大変な練習が必要になる。
一日二時間ほど練習すれば、ボール三つは一週間程度で習得でき、ボール五つは半年でできるようになる。
しかし、七つは二年くらい時間をかけなければならない。
それに加えて彼はボールだけではなく、トーチやリングを投げることが出来る。
全てできるようになるのにどれほど時間を費やしたことだろう。
しかし、恐らく練習を苦に思ったことはないはずだ。
好きなことを続けることはとても楽しいことだから。
彼が芸を披露する時の顔はいきいきとしていた。
彼は芸自体も好きで、さらにそれを観客に見せることも好きだったのだろう。
印象に残った言葉がある。
ジョバンニがあるとき修道士たちに出会い、「あらゆるものは神様をほめたたえている」「あなたの芸もそうだ」と聞いた時だ。
ジョバンニは、神様だなんて大それたことは考えていない、ただお客さんに喜んでほしいからやっていると答えた。
そうして修道士はこう答えた。
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「おなじことなのですよ、それは」修道士たちは いいました。
「あなたが 人々にしあわせを あたえるなら、それは神様をほめたたえているのと おなじことです」
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神様をほめたたえるというのが、どういうことなのか分からない。
けれども、このフレーズは頭に残った。
自分が何かを与えるとき、与えようとしているとき、それは受け手の幸福につながり、結果として自分も相手もうれしくなる。
短い大道芸のお話だが、とても記憶にのこる絵本だった。十年後のふとしたときに思い出しそうな。そんな余韻が残っている。